タワーマンションが今のように多く建ち並ぶようになったのは1997年の規制緩和以降。建築基準法が改正され「廊下や階段などの共用部分を容積率の計算から除外」「容積率600%、日影規制適用除外などの高層住居誘導地区制度」といった制度が設けられました。これでタワーマンションの建設は急増、東京都心や湾岸地域などで住居が大量に供給され、現在に連なるタワーマンションが建ち並ぶきっかけとなり、かつて倉庫や工場などがあった都心湾岸地区などの準工業地帯の姿が一変した他、大都市近郊の鉄道沿線や地方都市などにも超高層マンションが多く建設されるようになりました。

タワーマンションに明確な定義はありませんが、一般的に20階以上で、階高(一階分の高さ)は約3メートルであることから、高さ約60メートル以上のマンションを指します。

不動産経済研究所によれば、2018年以降のタワーマンション建設予定は全国で10.9万戸。その内訳をみても、首都圏は8万303戸と全体の73.8%で、そのうち東京23区内は5万5,570戸と全体の50%を占め、タワーマンションがいかに東京都心部や湾岸エリアに集中しているかがわかります。また西新宿では65階建て2棟で3,200戸、虎ノ門・麻布台では65・64・53階の3棟、月島では59階、勝どきでは58・45・29階で3,255戸の計画など、大規模化が目立ちます。

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※不動産経済研究所より

そんな中、東京都中央区は築地・月島など区内80%の区域で、要件を満たせば最大1.4倍まで容積率を緩和する制度を廃止、20年続けてきた居住誘導政策を転換すると公表しました。2018年度中に正式決定される見通しです。

理由は「人口が増えすぎたから」。中央区の人口は1953年に17万2,183人だったのが高度経済成長や都市化、核家族化の進行の進行などで40年にわたる人口流出に見舞われ、1997年には7万1806人にまで落ち込みましたが、現在は16万人を突破しています。元々は「定住人口10万人」といった目標を掲げていましたが、主にタワーマンション建設が寄与して目標を大きく上回ることとなりました。区のマンション居住率は1995年の66.4%から2015年には90.0%と、いかにマンションが人口増加に寄与してきたかがわかります。

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※中央区HPより

定住人口が増えるのは税収増加となる一方、幼稚園や小・中学校の増設や交通インフラ、生活利便施設などの整備が追い付きません。ラッシュ時の勝どき駅は人で溢れ、駅に出入りするのも一苦労。駅利用客は2000年には2万7,734人でしたが16年には9万9,517人と、7万人以上も増加しました。東京オリンピック。パラリンピックの選手村ができる晴海は除外されるようですので、まだ人口は増加するとは思われますが、マンションの容積率は低下する一方でホテルや生活関連施設・商業施設の容積率は逆に緩和させるようですので、そうなるとタワーマンションは採算制でホテルなどの用地仕入れ競争に勝てず、おのずと加速度的な人口流入は抑制されます。

湾岸の豊洲などにタワマンが林立する江東区も、今年秋から大規模マンションに「単身者向け」「3世代同居向け」の部屋を一定程度整備することで「ファミリー向けマンション」の整備を実質規制します。 同区は2004年から、マンション建設抑制を目的として、戸あたり125万円の公共施設整備協力金を課して、一時人口流入は鈍化しましたが、この制度は時限立法だったため、条例失効後の2007年から再び人口増加し始め、オリンピック開催決定などがさらに人口流入を加速させることとなってきました。

日本有数のタワマン密集地として知られる武蔵小杉駅も、ラッシュ時には駅に入る行列ができ、公立学校なども不足していますが、今後さらに建築計画は残っており、生活利便性全般へのゆがみはただちに是正しにくい状態です。

とはいえ前述のような建築規制や、人口が急激に増加したことによるひずみ露呈、さらには東京都区部の新築マンション発売価格は7,000万円を超えるなど高額化し、これまでのようなペースで都心部にタワーマンションが建ち続けるといったことにはならなそうです。「駅前・駅近」「一等立地」「大規模」「タワー」といったワードに代表されるマンションが主流を占めてきたマンション市場ですが、購入者は価格上昇しすぎた都心を嫌って、また供給側は新たなフロンティアを求めて「都心」今後は郊外などに主戦場が移動する可能性もあります。

ところで、1997年の規制緩和をきっかけに頭角を現してきたタワーマンションは、そろそろ築20年を超えてきます。

タワーマンションは、エレベーターや階段などの共用部分の面積比が大きく、コンシェルジュサービスやラウンジ、スポーツジムなどのサービスもあり管理費がただでさえ高め。加えてタワーマンションは、足場を組んで外壁の修繕が行えないため、ゴンドラなどによる高所作業となり、一般的なマンションに比してただでさえ作業性は落ち、基本的に風速10メートルを超えると作業は中止。工期は長めで非常にコスト高です。とあるタワーマンションの大規模修繕は2年10か月かかり、総額は6億円以上でした。また設置されている高速エレベーターなどの設備は、世界に一つしかない特注品で非常に高額であることが多く、相見積もりがとれず、修繕や交換には莫大なコストがかかります。そもそもエレベーターや情報通信機器など技術進化の激しい分野では30年前と同じスペックのエレベーターに交換するとは考えにくく、コストは想定よりアップする可能性が高いのです。

さらには、修繕積立金は入居当初低めに設定されており、10年後に2倍、15年後には3倍となるとか、100万円単位の一時金を拠出する計画となっていることがほとんどですが、こうした修繕積立金の負担が、あちこちのタワーマンションで露呈する可能性は高いものと見ます。

さらに10年後はどうでしょうか。建物の老化と共に、入居当時は30代後半~40代後半だった住民も歳を重ね60代後半~70代後半と、定期収入のない年金生活者が中心で、建築費の高止まりや消費増税に加え、さらに修繕積立金の度重なる値上げとなると、耐えられない家計も出てくるでしょう。

そうなると建物がどんどん劣化していくのに必要な修繕もままならず、建物が朽ちていくのを見届けるしかないといった「タワーマンションの廃墟化」が注目されるようになるのはおそらくこのあたりでしょう。都心湾岸地区や武蔵小杉に林立するタワーマンション群の中にも、持続可能なマンションと、そうでないマンションの2極化がみられることになるのではないかと予想します。