2021年の民主党から自民党への政権交代以降、都心マンションを中心に価格上昇を続けてきた日本の不動産市場では2013年あたりから、中国人による都心タワマン爆買いが叫ばれ「日本の慣行を理解しない中国人オーナーが増加して、マンション管理は適切にまわるのか」とか「2018年には中国人による爆売りが始まるのではないか」といったことがいくつかのメディアで喧伝されました。とりわけ後者の「2018年問題」については不動産市場のバブル崩壊」とも結び付けられ、恐怖をあおるような論調が多かったのですが、2018年になって、いまのところその爆売りは起きていません。

そもそも爆売りが起こるとされた根拠は、2013年に都心マンションを買った中国人が、5年経過すると譲渡税が安くなるため、そこを見計らって売りに転じるだろうといったものでしたが、この前提がそもそも間違いでした。不動産を売却した際に利益が出ると、5年以内であれば「短期譲渡」として多額の税金がかかり、5年を超えると「長期譲渡」となり税額が抑えられるのですが、この「5年」というのは一般に「引き渡しを受けてから」です。都心タワマンなどは発売から引き渡しまで2年、あるいはそれ以上かかるケースも多く、2018年に売っても長期譲渡とは原則認められないのです。

またそもそも、一時騒がれた中国人による爆買いなどというものは、世界的に見れば「かわいいもの」です。こちらをご覧ください。UBSが定期的に出している、世界主要都市の「不動産バブル指数」です。

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東京のバブル指数は0.68と「適正価格よりはやや高い」といった程度。それに対しバンクーバー、ロンドン、ストックホルム、ミュンヘン、香港、シドニーは明らかに高く「バブルリスク」といったレベルです。こうしたところには、圧倒的な物量のチャイナマネーが入っています。バンクーバーやシドニーなどは永住権を取りやすいといった事情もあります。つまりチャイナマネーは世界の主要都市に大きく入り込み、日本は10番手以降であり、そのボリュームは限定的。東京がバブルならその前に世界がバブルであると、その文脈を説明する必要があるわけです。いずれにせよチャイナマネー流入は限定的なのですから、仮に引くとしても、それも限定的です。

また仮に東京の不動産を売って現金化し、そのお金をどこに持っていくかという問題もあります。本国に還流はさせないでしょうから、円やドルに換金するか、他国の不動産を買うかということになりそうですが、こうした投資行動にはあまり意味もないでしょう。

したがって「中国人による爆売りもなければ、2018年問題も起こりえない」というのが正解です。私もしばしば各種のメディアに取材協力しますが、市場の実態というのはたいてい、メディアが喧伝するよりは落ち着いたものです。