メディアなどではしばしば「不動産市場はバブルだ!崩壊する!」といった論調がみられます。確かに新築マンション価格は2012年の民主党から自民党への政権交代以降上昇を続け、このところ売れ行きにも陰りが見られます。

市場の好不調を占うのは「契約率70%」ですが、17年の契約率は70%を下回ることが多く、モデルルームなどの販売現場では、値引きを提示する例も散見されます。ではこの状態で、あたかも90年のバブル崩壊、08年のリーマン・ショックのように、はたして不動産市場が大暴落するでしょうか。おそらく、そういうことにはなりません。「そもそもバブルではない」「したがってそもそも崩壊することもできない」というのが筆者の持論です。それはなぜか。

まず、昨今の首都圏新築マンション発売戸数は、ピーク時には9万戸/年を超えていましたが、17年は3.6万戸程度に過ぎません。90年バブル・08年リーマン・ショック前のプチバブル時には「駅前・駅近から駅遠へ」「都心から郊外へ」と遠くへ伸びるようなマンション分譲が行われていました。一方で12年以降のマンション分譲は逆に「都心・駅近・一等立地」が中心であり、かつ「大規模・タワー」といったものが主流です。つまり、価格調整の必要はあるものの、決定的に売れそうもない在庫も少ないのです。

また、かつての新築マンション市場では、いわゆる大手デベの専有比率は15-20%程度でした。言い換えれば全体の80%以上は中小のデベによるものだったのです。彼らは資金体力にも乏しく、自転車操業のような分譲事業を繰り返し、駅や都心部から遠くへ遠くへと分譲のフロンティアを追い求めているうちに、経済ショックに見舞われ破綻してしまったのです。こうした反省を踏まえ中小デベは現在、都市部での新築マンション分譲事業のみならず、中古マンションやアパートの再販売事業や介護系建物を手がける、需給を見極めた上で地方の県庁所在地で分譲するなど、事業ポートフォリオを多角化させています。

昨今の新築マンション市場における大手の専有比率は40-50%。彼らにとって新築マンション市場は、多くの事業ポートフォリオの一部に過ぎません。アベノミクスでずいぶんと上昇してきた新築マンション価格も、売れなかったからと言ってすぐに投げ売りをしなければならないような、切迫した情況ではありません。もちろん現場によって、価格交渉には柔軟に応じていますが、立地に課題のあるものは基本的にないため、暴落を招くレベルで値引く必要もないのです。

一部メディアはしばしば刺激的なタイトルや論調で不動産市場バブルが叫ばれます。またそれに乗じて「暴落あおり専門家」ともいえる輩が騒ぎ出したりするのですが、市場の実態はこれまで述べたとおり、もう少し落ち着いたものであるとの認識を持っておいてください。

新築マンションに課題があるとすれば、明らかに「グレードが下がったこと」です。たとえば、かつてなら70平米の3LDKが主流だったところ、65平米に狭まってしまうとか、構造や設備・建具などの仕様がグレードダウンしていると言った具合です。不動産市場が上昇基調にあるなかにおいて、ただ単純にマンション価格をあげるのでは、売れ行きが不安です。したがってマンション価格はなるべく上げずに、同じ3LDKでもちょっと狭くしたり、仕様を落とすことで、価格が上がりすぎないように、できる限りの調整をするわけです。13-15年あたりの新築マンションと現在のそれと見比べると、びっくりするくらいのグレード差があります。

このことも理解しながら新築マンション選びを、またこうした経緯を踏まえながら中古マンション探しをすると面白いかもしれません。