不当に低い価値で見積もられてきたと思われる日本の中古住宅。どのようにしたら他先進国並みに正当な価値がつくようになるでしょうか。具体的にいえばこういう順序です。

「1.まずはエイヤで評価手法を変え」「2.次に評価に基づく融資手法と税制を変え」「3.このことによって購入者の中古住宅に対する認識が変わり」「4.だからこそ市場全体での評価が高まる」「5.これを受けて不動産屋さんが高い査定をする」という順序です。

実際に、しかるべき中古住宅の評価が適切に行われるようになると所有者も「点検・修繕・リフォーム・リノベーションをしっかりと行う。またそれらの記録を残しておく」などで、自宅の価値をいかにして維持するか、高めるかということに腐心するようになり、だからこそますます流通しやすくなり、ひいては住宅の寿命も延びるというわけです。

日本の場合「税制上の法定耐用年数が22年(木造住宅の場合)になっているからダメなんだ。法廷耐用年数を引き伸ばせ」という意見もあります。しかしこれはあくまで税制上の話。米国も同様に27.5年と決まっていますが、これと建物の評価とはまったく連動していないのです。したがって、税制上の法定耐用年数を引き伸ばすことが解決につながるわけではありません。住宅への投資を促したいならむしろ、法定耐用年数はもっと短くして、所得から控除できるようにでもすればよいのではないでしょうか。減価償却を実際に行えるようにするわけです。さらにこの概念をリフォームに採り入れれば、住宅への再投資が活発になるでしょう。

日本の中古住宅の価値が20-25年でゼロになってしまうのに、特になにか決まりがあったわけではありません。なんとなくそうなってしまい、いつのまにかそれがあたりまえになってしまった、というのが本当のところ。何も決まっていなかったからこのようなことになってしまったのです。だとすれば、具体的に評価される市場を創るべく評価手法を決めてさっさと実行すればよいのです。もちろんいきなり完璧なものは創れませんから、徐々に修正・改善していく必要はあります。米国ももちろんそうした試行錯誤を繰り返してきました。とはいっても、この染み付いた常識を覆すのはそうかんたんではありません。では、日本が参考にしようとしている米国では、具体的にどのように中古住宅の評価をしているのでしょうか。

まず「築年数」は評価に関係ありません。アメリカではこの実際上の価値を「残存経済的耐用年数(Remaining Economic life)」を割り出すことによって算出しています。つまり築年数がいくらであっても、長持ちするものとそうでないものがあるということなのです。同じ築30年でもまだまだ持ちそうなものもあれば、あとはもう朽ちていくのを待つだけのものもあるというわけです。例えば築50年でも、あと30年以上持ちそうだよねということになれば、築80年までいけるのです。

でももう少し具体的に、この「残存経済的耐用年数」はどうやって導き出すのでしょうか。ご存知のとおり、建物の評価手法は大きく3つあります。ひとつは周辺の取引事例から導き出す「取引事例比較法」。そして、賃貸に出したら得られるであろう賃料から割り出す「収益還元法」。最後が「機能と実態に合わせた再調達原価の精緻化を行う」として国交省がこれから行うとしている「原価積算法」です。

日本の住宅査定は現在「まわりがいくらで売れたか」の取引事例比較法が基本です。「収益還元法」はいま、住宅に採用できません。なぜなら、そんなことをしたらむしろいまより中古住宅の価値が下がるケースが出てくるからです。マイホームを購入する人が、収益還元法といった投資的観点から見たら、いかに高く買っているかということが明らかになるだけです。

そこで国交省は「原価積算法」を採用しようとしています。これは簡単にいえば、構造躯体や内部仕上げなど、建物の科目ごとに単価と構成比を計算して数字を積み上げるとか、リフォームを行ったらその分の付加価値がつくような仕組みを創ろうということ。このことは、どんな建物でも20-25年でゼロになる日本の現状から見れば画期的といえます。

しかしこれだけでは、いくら計算してもたいして中古住宅の価値がつくことにはなりません。なぜなら、中古住宅の価値は原価の足し算で決まるのではなく、間取りやデザイン、立地(ロケーション)や立地と建物のマッチングなども踏まえた、トータルの見立てで決まるためです。これは、自動車や家電などが原価で売れるわけではないのと同じですね。

大事なのは次のような米国の評価における概念です。

まずは構造や部材の品質に応じて「1.物理的耐用年数」を決めます。実際に市場で価値を持って売買できるのはそれより少し手前の「2.経済的耐用年数」です。それに対する「3.現実の築年数」があり、2から3を引いたのが「残存経済的耐用年数」です。ここまではそう難しくもないですが、ここからがポイントです。アプレイザー(評価員)が「4,事実上の築年数」を割り出します。「この建物は築25年だけれども、事実上築10年である」といった評価をするのです。

たとえば木造住宅の物理的耐用年数を60年と決めます。すると経済的耐用年数は55年程度。現実の築年数が25年なら、残存経済的耐用年数は30年ですが「事実上は築10年だ」とすれば残存経済的耐用年数は、一気に45年に延びるのです。

このような評価手法を採用して、一定の築年数が経過しても、点検や修繕、リフォームを繰り返せば事実上の築年数は何度でも若返り、残存期間がどんどん延びる、というわけです。国交省は、こうした地点にまで到達しようとしています。