マンション管理においては、管理会社はたんなる業務委託先に過ぎず、主体はあくまで所有者で構成する管理組合ですが、実際には「マンション管理は管理会社がやってくれるもの」と思い込んでいる方もいまだに多いようです。このことでは、管理会社も困っているケースもあります。建物の修繕が必要な時期にさしかかって修繕の提案を提示しても、管理組合の合意が取れずに進まない、結果としてマンションの劣化は進み建物の寿命が縮み、資産性を落としていくのをただ見ていることしかできないからです。

もっとも、多くのマンション管理会社は、親会社による説明不足のツケが回っていると言えるのかもしれません。新築マンションを販売する際には、ユーザーがそれを求めていないことも忖度して、マンション管理について丁寧な説明が行われているとは決して言えません。

所有者の多くがマンション管理に無関心で、特定の人物が何十年も理事長を務めているケースでは、管理会社などと癒着し、大規模な工事が行われるたびに裏で理事長にリベートが支払われているといったケースもしばしば発覚していますが、マンション管理への無関心や他者への依存は、こうした犯罪の温床にもなります。

財団法人マンション管理センターの主席研究員・廣田信子氏が、「第2回マンションの新たな管理ルールに関する検討会(国土交通省)」において、以下のようなことをおっしゃっています。

「当センターに相談を寄せられる約1万件の中に、内部紛争に関するものがどれだけあるかを全部拾い出したことがあります。たんなる相談というより、内部の深刻な対立に伴うものが、7%ぐらいありました。その中には、区分所有者と理事会との対立、もっと根深いものとしては、理事長と理事の間で、理事長の解任合戦をしている事例や、同じ1つのマンションの中で、住宅と店舗が全く相入れずに、1つの理事会が成り立たない事例、理事会と修繕委員会が対立をして、にっちもさっちもいかないような状況になる、そのような内部対立が原因で、管理がうまくいかないという事例がかなりあります。 人間関係の根深い対立は、すぐ訴訟にもいきますので、理事長になると裁判の被告にされてしまうとか、怪文書をまかれたり、家族まで嫌がらせをされたり、そういう深刻なものも実は相談に寄せられています。建替えの案が出て、建替えか修繕か、コンサルをどこにするかで揉め、建替え計画がつぶれてしまったあとも、その後遺症で、いろんな思惑が錯綜して、業者とだれがつるんでいるとか、だれとだれがつながっているとか、中に幾つも派閥ができ、大規模修繕工事が一切できなくなってしまったマンションがありました」。(要約)

さくら事務所がお付き合いする管理会社は、当事者意識の高い管理組合の割合が多い傾向にあります。そうした管理組合を見て言えるのは、しっかりした管理組合運営が行われているところは「核となるキーパーソンが数名いる」ということ。こういった方が数名いると、なんとか回っていくものです。そうでない場合、マンション全体のためと思って孤軍奮闘した理事が「管理会社と癒着しているのではないか」「暴走して好き勝手なことをやっているのではないか」などと変に勘ぐられ、怪文書が回るなどしてマンションにいづらい、いられなくなって引っ越してしまうなど、本末転倒な事態に陥ることさえあるのです。とあるマンションでは、いくつかの派閥に分かれ、それぞれが修繕の有無や建て替え論議などで分裂・対立しているところもあります。

いずれにせよ現実問題として、良好な管理組合運営が行われているマンションは、いまだ少数派といっていいでしょう。マンション管理の責任は、いうまでも所有者で構成するマンション管理組合にあり、マンション管理組合を「社会に不可欠な機能」として捉え直すことが、課題解決の前提であるということを、ここで強調しておきたいと思います。