今回のコラムは、現在マンションにお住まいの方向け。これからマンションを買う方は「買った後にはこんなこともあるんだなあ」という風にお読みいただければと思います。

「共用部の清掃が雑」「騒音など住人間トラブルの際、頼りにならない」「積立金の大口滞納をほったらかし」「管理費の内訳が高い・不透明」「大規模修繕の見積もりが高すぎる」といったマンション管理会社に対する不満から、管理会社のリプレイス(交替)を検討する管理組合は、およそ5件に1件(平成25年マンション総合調査・18.3%)。

こうした不満の矛先は主に管理会社の担当者(フロントマン)や管理人へ向けたもの。フロントマンは理事会との窓口であり、その力量次第で、管理組合が受けるサービスの中身に大きな差が出る。中にはひどいフロントマンもおり、理事会議事録の署名を偽造するといった、とんでもない事例も報告されています。

管理会社のリプレイスを推奨するのは、成功報酬型のコンサティング会社や設計事務所で、彼らの報酬は「年間削減管理費の50%」といった形態。したがって彼らは、管理費を削減すればするほど儲かるので、いきおい徹底的なコスト削減に走りがちです。

よくあるパターンは、売主系列の管理会社から、ローコストが売りの独立系管理会社へのリプレイス。加えて、清掃時間などその内訳も細かく見直し削減していき、年間数千万の管理費削減を実現、コンサル会社は千万単位の報酬を受け取ります。

ところが、管理費削減で一見万々歳のはずが、次第に様々な問題が浮かび上がります。例えば、管理レベルが著しく低下したことによる「住民の不満」。清掃時間を削減しすぎて従来のように清掃が行き届かず、マンション内が荒廃します。「共用部の電気交換をしてくれない」「ゴミ整理が雑になった」「管理組合広報などの投函をしてくれない」などのサービス低下に住民が不満を爆発させるのです。

また中には「専有部蛍光灯の交換」「自治会の寄付受付」「マンション前の道路清掃」「残業」「雪かき」「世間話の相手」「備品購入」など、契約内容には含まれないものの、以前の管理人が善意で行っていたことがなくなり「不親切だ」として不満も漏らす住民も。

さらには「○○ブランドのマンションではなくなってしまった」と、管理会社が大手系列でなくなることに不満を持つ向きや「理事会の司会進行や議事録の作成をしてくれなくなった」と管理会社のリプレイスを主導していたはずの理事が不満を漏らすケースも。

さらにまずいことには、こうした不満を管理会社に伝えると、1年更新の管理契約を、管理会社から更新拒絶されるケース。ただでさえぎりぎりの利益で仕事を請け負っていたのに、過剰なサービスを求められても困るわけです。こうなると、再び管理会社を探さなければならず、一度下げた管理費の値上げを再検討する手間も発生します。

こうして管理組合は、数千万のコストをかけて、むしろ住民の不満が爆発し管理機能不全に。こうした事態にいたたまれなくなった理事長や、リプレイスを推進した理事は退任、住民との関係が悪化し、マンションを売り払い引っ越してしまったケースを何度も目にしてきました。

「報酬は、削減できた管理費の50%」といった、削減できなければ報酬を全く払わずに済むコンサル会社の提案は、管理組合が全くリスクを負わずに収支改善に乗り出せそうな気がしますし、総会での住民への説明もしやすそうで魅力的です。

ところが、管理費を大幅削減できるパターンというのはたいていの場合、売主系列の管理会社から、激安を売りとする管理会社への変更を伴いますが、管理委託費が少なくなる代わりにマンション管理の質が低下することが多いものです。そもそも管理会社を変えるといったリスクを冒さなくても、管理費削減は可能だが、ローコスト系の管理会社のビジネスモデルは、日常の管理は激安で受注しておき、後に修繕工事受注で取り返すといった傾向が強いのです。

リプレイスを声高に吹聴する提案は、冷静に分析・検証しましょう。現行のマンション管理会社について、問題をあえて大きくし混乱させることで、本来不要だった管理会社変更を行うことで利益をあげようとしているのかもしれません。管理会社を変更するデメリットを説明せず、リプレイスのメリットのみを強調する場合は特に要注意です。

成功報酬型のコンサル会社は勢い、自らのコミッションにつながる「削減額の最大化」に向けた仕事に走り勝ちであり、住民が享受している様々な側面を見逃しがちです。管理費削減は、現状のサービスレベルをキープするか、あるいは向上させながらコストを抑え、住民の満足・納得のいくものでなければ意味がないでしょう。