• リノベーションが得意な中古住宅専門の不動産会社、
    株式会社しあわせな家、賃貸管理部の佐藤です。

    さて、もはや状況からして、飲食店コンサルタント会社の社長が逃亡したのは疑いようがありません。
    逃げる際、たったひとつだけ持ってた小ぶりのキャリーバッグ。
    そこには2億円の現金が入っていたか。

    さらに、社員のSさんは後から気付いたことがあった。

    「そういえば、社長は時計集めが趣味で、リビングのガラスケースにあった1個数百万もする腕時計が全部無くなってました。10個くらいはあったと思います」

    あっ、そう。
    もうそのくらいのことでは驚かない。
    それより部屋の中を何とかせねば。

    まずは、滞納家賃の督促とペット飼育が契約違反である旨の内容証明郵便を誰もいない部屋に向けて発送する。
    およそ2週間後に受取人不在で戻ってきたら、今度は賃貸借契約の解除通知を同様に内容証明郵便にて発送する。
    それがまた2週間後に戻ってきたら、晴れて契約解除となる。
    無駄なことのようだが、証拠を残すため、あえて手順は踏まないといけない。

    次にお部屋の原状回復だ。
    残置物は簡単には捨てられない。
    万一、後から本人が現れて揉める場合もある。

    幸いにも今回の保証会社には郊外に専用の倉庫があり、長期で保管してくれると言う。
    支払われなかった家賃も、鍵の交換費用も、原状回復費用も補填してくれるとのこと。
    対応もすごく丁寧だ。
    まぁ、それはそれで良かったが、こっちは一銭にもならない。
    これまでとこれからの膨大な手間と時間、及び精神的な苦痛はどうなるのか。
    もちろんどうにもならない。
    それが「管理」の仕事である。
    まずはリセットして新たな入居者を入れることだけを考えないといけない。
    保証会社のお陰でリセット出来るだけマシである。

    さて、ワンコ。

    保証会社はペットまでは引き取らない。
    もちろん世話も出来ないし、引き取ってもし何かの拍子に死んでしまった後に飼い主が現れた場合、法外な金額を請求される恐れがある、という理由からだ。
    家族同然の命に金額は付けられないのである。

    えっ、じゃワンコはどうすればいいの?
    いままでも同じようなケースはあったでしょ?

    「死ぬまで放置です」

    マジ・・・。
    何とかせねば・・・。

    4、5日してSさんから電話があった。

    「佐藤さん、やりました! 3匹とも貰い手が見つかりました!」

    わぉ、さすがSさん、すごいじゃん!
    思わず手を叩いて喜んだ。
    しかも、3匹とも違う飼い主という。

    Sさん、どうやって見つけたの?

    「はい、SNSで難なく」

    最近の若い人たちはすごい。
    感服の一言に尽きる。

    これで入居者再募集の目処がついた。
    とりあえずは一件落着である。

    ところで、その間オーナーはどうだったか。
    海外に赴任しているため、こちらからは逐一メールによる報告だ。
    内容が内容だけに普通なら激怒するところである。

    「とんでもない入居者を入れやがって!事故物件にでもなったらどうしてくれる!」

    ていう具合に。
    ところが、オーナーは特段感情的になることもなく、事実を淡々と受け入れてくれていたので、こちらも事の対処に集中でき、結果スムーズに運ぶことが出来た。
    もし、そこで感情的なやり取りになってしまうと、オーナーをなだめるエネルギーも必要となるため、集中力は分散し、どこかでミスが生じかねない。
    一番リスクを負う立場なのに、そのオーナーの冷静さには本当に感謝である。


    残置物撤去の日、今回一番の功労者であるSさんに聞いてみた。

    Sさん、色々ありがとう。お陰で助かった。これからどうするの?

    「もう少し会社の後始末をやります。その後のことは白紙です」

    それは偉いけど、Sさんは役員でも何でもないただの社員だよ。ほどほどにして放ってもいいと思う。

    「実は先日通帳を記帳したら給料が入ってました。社長が逃亡した翌日です。彼の最後の良心でしょうか。まぁ、その分くらいは働こうかなと思います」

    そっか。でも変な連中も絡んでるんだし無理しないように。
    Sさんなら、どこ行ってもいい仕事出来るよ。
    ホント、Sさんのお陰で助かった。。。

    それにしても、逃亡した◯◯さんは一体何者なんだろうか?
    本当に詐欺師なんだろうか?
    危険なお金の運用に失敗して逃げたんだろうか?

    これらの謎が解明されて、初めて今回の事件が終息を迎えると思う。
    次回の最終回でこれを明かしたい。

    佐藤 勝也のブログ

    うっかりして気付かず見落としてしまうことを、よく「盲点」と表現します。そして盲点は、よくよく考えれば実は他愛もないことが多いのですが、見つけ難く気付かないままの盲点もあります。そんな様々な盲点に光を当て、困ってるオーナー様の一助になれば幸いです。