• リノベーションが得意な中古住宅専門の不動産会社、
    株式会社しあわせな家、賃貸管理部の佐藤です。

    18時、タワーマンションのエントランスに、うな垂れた様子のSさんがやってきた。
    大丈夫? と聞こうとしたところに、スーツ姿の男性が3人近づいてくる。
    身分証を提示された。所轄の刑事だ。
    3人とも笑顔だが、どこか威圧的な感じがするのは気のせいか。

    ふと、10年くらい前の出来事を思い出す。
    銀座駅の構内を歩いていたら、いきなり後ろから腕を掴まれたことがある。
    かなり強い力で。
    驚いて振り向くと、他にもう一人いる。
    双方ともスーツ姿で屈強に見える。
    「警察の者ですが」と言ったきり、全身を隈なく見られた。
    その間、腕は掴まれたまま。
    「すみません、人違いでした」
    たったそれだけ言うと去って行った。
    身分証を提示されなかったので、警視庁の公安ではないかと推測した。
    すると、その時私はテロリストか何かと間違われたのだろうか?
    冗談ではない。
    ほんの10秒ほどだったが、その時の恐怖心は忘れない。
    彼らの醸し出すその威圧的なオーラは特別だ。

    さて、5人で例の部屋に向かう。
    誰もいないとは分かっていても緊張する。
    しかし、突然に誰か出てきても刑事と一緒だから大丈夫だ。
    鍵を開ける。
    案の定、誰もいない。
    ワンコは変わらず3匹。
    シッポを振り、元気そうだ。
    3人の刑事はひと通り捜索している。
    私は思いついて一つ聞いてみる。

    あのー、ベランダに男がいた部屋の方は被害届を出したんですか?

    「いや、出さないそうです。なのでここに誰もいないことが確認出来たらこの件は終わりです」

    と、なんとなく不本意そうである。
    そして、「じゃ、誰もいませんので我々はこれで」とそそくさと出て行った。

    うん、まるで昼間の若い巡査のようだ。
    つまり、獲物の臭いがなければ興味も失せるということ。
    そういう人種なのだ。

    2人きりになり、Sさんが先に口を開く。

    「うちの社長はきっと逃げました」

    えっ? やっぱり?

    「はい。さっき調べたところ、事務所の家賃、大田区で運営してる飲食店の家賃、そして仕入れた食材の代金も未だ支払われていないようです」

    でも、たった1ヶ月分の滞納ごときで命懸ける?

    「実はヤバそうな人から、社長に金を貸してるがどこにいる?と事務所に電話がありました。運用して増やしてあげるからと言って、何人かから結構な額を預かっているようです」

    えっ! どのくらい?

    「私の聞いた限りだと、ざっと2億くらい」

    ・・・。

    「その電話の人は、表に出せないお金だから社長を信用して貸したのに。被害届も出せやしない、とかなり困っている様子でした」

    ・・・。

    「ねぇ、佐藤さん、僕はどうしたらいいんでしょうか!」

    絶句である。
    どうしたらいいかと言われても、それどころじゃない。
    うちの管理物件から入居者が大金を持って逃亡したということか?
    しかも、マネーロンダリングに関わっている?
    自分の身近でこんなことが起こるものなのか?

    ふと、テーブルの上の読みかけの本に目をやる。
    会社の経営に関するものだ。
    さらにその横にも数冊の本が積んであるが、いずれも経営に関するものである。
    そして、都内が一望できる窓際に目を移すと、そこにはお正月に神社でもらう商売繁盛のお札が御神酒と共に置いてある。

    彼は詐欺師なのか?
    商売繁盛を願う詐欺師などいるのか?
    疑問は残るが、良からぬ原因の下、逃亡したのは事実である。

    続く・・・

    佐藤 勝也のブログ

    うっかりして気付かず見落としてしまうことを、よく「盲点」と表現します。そして盲点は、よくよく考えれば実は他愛もないことが多いのですが、見つけ難く気付かないままの盲点もあります。そんな様々な盲点に光を当て、困ってるオーナー様の一助になれば幸いです。

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