• 仲介会社の案内で空室の内覧に来たのは、30代の後半くらいの短髪で柄シャツを着た少しチンピラ風の男と、20代の白人女性。
    2人ともあまり喋らない。
    淡々とお部屋を見回っている。
    どういう関係だろう、と思いながら2人を盗み見る。

    内覧の翌日、その空室に入居申し込みが入ってきた。
    昨日の2人である。
    男は建設会社勤務、白人女性は翻訳関係の会社に勤務。
    そして2人の関係は夫婦!
    うーん大丈夫かなぁ、と少し不安を覚えたが、勤務先である建設会社の社長さんが連帯保証人になるという。
    ならば、とOKを出し、後日契約の立会いに向かった。

    契約の場でそのご主人と話した印象は、まあまあ真面目な感じ。
    その特異な容貌からは想像できないくらいに、中身はごく普通の人に思える。
    奥様はロシア人とのことで、名前はユリア。
    長身で、グラマーで、キツい香水、という印象。
    カタコトの日本語を喋る。
    そして、無事契約締結。

    さて、その後、建物巡回時に度々ご主人やユリアと出喰わすが、特に変わった様子はなく、2人で一緒の時も普通に会話をしている。
    きちんと挨拶もする。
    ただ、一度だけユリアがキラキラのワンピースを着て、いつもより更にキツい香水の香りを放ちながら出かけるところに出喰わしたことがあった。
    あれっ?ユリアさん、これからお出かけ?
    「ハーイ、サットサーン(佐藤さん)、シゴトナノデスヨ」
    あっ、はい、いってらっしゃい。
    え、えっ?これから仕事?翻訳の?
    いや、きっとお友達と遊びに行くんだろうな、日本語は難しいからまだ混乱してるのかな、とその時は思ったが、すぐに思い直した。
    もしかして、夜のお仕事?
    昼は翻訳で、夜は飲食店でバイトなのかな?
    ご主人とはそこで知り合ったのかな?
    とか、一瞬いろいろ考えは巡ったが、すぐ頭から離れてしまった。

    それから1年が経過しただろうか、ユリアから電話があった。
    ユリアが私に直接電話を寄越すのは初めてだ。
    「サットサーン、オフロノキカイ、ウゴカナイヨ」
    あっ、はいはい、換気扇ね。明日の日曜日、電気屋さんと行きますね。
    翌日、10時頃にお部屋に行くと、心なしか元気のないパジャマ姿のユリアが一人、そこにいた。
    えっ?パジャマ?
    ユリア、そんな格好でどうしちゃったの?

    (下)に続きます。。。

    ※写真はイメージ、「ユリア」は仮名です

    佐藤 勝也のブログ

    うっかりして気付かず見落としてしまうことを、よく「盲点」と表現します。そして盲点は、よくよく考えれば実は他愛もないことが多いのですが、見つけ難く気付かないままの盲点もあります。そんな様々な盲点に光を当て、困ってるオーナー様の一助になれば幸いです。