毎年恒例の年末コラムです。

【過去の年末コラム】
2009年「不動産営業のあるべき姿」
2010年「私の役割」
2011年「職人の肌感覚」

今年のタイトルは「結論は人間力と3.3倍」
毎度暑苦しい文章ですが、どうぞお付き合いください。

悩み

私はこの半年余り、悩み続けていました。
コラムやブログでまともな文章を書く気になれない悶々とした毎日で、この悩みを解決しようとせず、そこから逃げようとしている自分も居ました。

その原因は、創業当時は「ホームインスペクション付き」や「リフォームとセットで」などと言っている会社はどこにも無く、新しい事をやっているという心地良さがありました。ところが今年に入り、あっという間にそれらは当たり前のことになってきて、新鮮さが無くなってしまいました。象徴的だったのは、日本FP協会に所属するファイナンシャルプランナーには毎月冊子が届くのですが、その10月号の特集が「中古住宅・リフォーム市場とFP」。ホームインスペクションや瑕疵保険などについて詳しく説明がされていました。ファイナンシャルプランナーにまでこれらは浸透してきているのです。

(ちなみにP.10に使われている写真は弊社のお客様の物を提供させていただきました)

こういう時が来ることはわかっていましたが、いざその場に立ってみると「この先この会社をどうして行けば良いのか?」「大手のような規模を目指すべきなのか?」「さらに新しい事を始めるべきなのか?」等々、迷走し始めてしまいました。

おかげ様で現在はかつて無い程の忙しさで、業績は順調に推移しています。しかし、ちっとも心が落ち着きません。
そんな中、弊社の取締役長嶋修とさくら事務所取締役の大西さんとゆっくり話をする機会に恵まれました。
「これからこの業界はどうなっていくと良いか」「中古住宅を売買する人としあわせについて」あれこれ自分が考えている事を話している内に、段々とこの会社の方向性が見えてきました。
そして、年末ギリギリの今、その悩みを解決する結論を出すことができました。
 

結論は「人間力と3.3倍」

何のことやら?という感じでしょうが、お客様に最高の満足を感じていただくために、これから弊社が目指す方向性を明確に示す言葉です。
この結論に至った背景を説明します。

「人間力」

不動産仲介業において、「規模」と「資本力」はメリットになるか?
我々の営業エリアでは、たった今、大手の力は絶大です。そこで、大手=規模のメリットを冷静に考えてみます。
家を買うことを例に挙げると、お客様が求めているのは「自分達にマッチした物件情報を得たい」という点と「安心安全な売買をしたい」という点です。しかし、これらは既に大手のメリットでは無くなっています。

ご存知の方が増えてきましたが、大手を含めた我々不動産業者が仕入れられる物件情報と、お客様がwebで仕入れられる物件情報にほとんど差が無くなってきています。今後ますますこの傾向は強くなるでしょう。
また、安心安全な売買という点も、確かに大手の契約書等はしっかりしていますが、中小のそれと差は無くなってきています。

こんな事は既に大手もわかっていて、差別化するあらたな方策として、中古住宅売買に「保証」をつける会社が現れました。具体的には瑕疵担保責任の対象となる「雨漏れ」や「シロアリ」等について、検査に合格した住宅には1年間の保証を付けますというものです。恐らく来年中にはどこの大手も同じような事を始めるでしょう。しかし、これは国が目指す中古住宅売買の理想型とはズレています。

問題なのは、これらは戸建の場合築20年以内、マンションの場合築25年以内に限定されている点です。瑕疵がある可能性が低いものに対して保証をつけるというスタンスは、あくまで会社寄りの考え方で、お客様寄りの考え方ではありません。本来は築年数に関係なく、検査に合格したものすべてを対象にすべきです。また、検査に合格しても、その仲介会社から物件を購入しないと保証を受けられないというのも変です。例えば、A社が売却の依頼を受けて保証を付けた物件を、B社のお客様が買った場合(いわゆる片手取引)はB社のお客様には保証が付きません。これでは、建物を検査して保証しているというより、確率論で保証をサービスすると言っているようなものです。

もちろんこの仕組みは無いよりは有った方が良いのは当然ですが、スタンダードにはならないと思っています。国が目指す最終型を予想すると、恐らく売主側は何の保証もせず、買主側が購入前にあれこれ調査をし、責任は買主と調査会社(保険会社)が負うというカタチでしょう。

少しそれますが、新築一戸建業界を見てみます。住宅展示場でおなじみの大手ハウスメーカーのシェアはたったの20%あまりです。最大手の積水ハウスのシェアは5%くらい。私が積水ハウスに入社した1995年当時とほとんど変わっていません。残り80%の人は大手ではなく、工務店や建築家など中小の会社を選択しています。ハウスメーカーは大量仕入ができる分、大手である事にメリットはあります。しかし、そんなハウスメーカーでも大手のシェアはこの位なのです。

では、不動産仲介業の場合はどうなのか。大手から買えば安く買える。大手に頼むと高く売れるということはありません。また逆に、中小だから高く買うことに、中小だから安く売ることにということも無い訳です。ハウスメーカーよりも大手が寡占化する可能性は低いでしょう。

また、「資本力」についても、大手の広告宣伝費は圧倒的です。しかし、個別の物件についての宣伝は、webで特別なページを作ってくれるわけもなく、新聞折込チラシくらいで、その効果は今後ますます低くなっていくでしょう。再度新築の例を挙げると、トヨタホームという会社があります。「資本力」では日本一ではないかと思いますが、かれこれ何十年も中堅のままです。やはり、住宅業界は「資本力」がもの言わない特殊な業界なのでしょう。

と、大変長くなりましたが、結論として不動産仲介業において「規模」と「資本力」は大きなメリットにはならないと考えます。それよりも大切なことは担当者の「人間力」です。大手であろうと、中小であろうと関係なく、最も大切なのは「担当者」という時代になるでしょう。あえて「営業力」とは書きません。「営業力」という言葉からは「売り込む」というイメージを連想させます。家は「売り込む」ものではありません。高い知識と誠実さを兼ね備えた「人間力」。それを身に付ける土壌を作ることが会社の役割になるのです。

弊社では他社にない様々な取り組みをしています。「初回面談」「内覧時チェックシート」等々。弊社の初回面談を担当するスタッフは全員宅地建物取引主任者でファイナンシャルプランナーでもあります。そのため現状、ある程度個人の技量に任せています。しかし、会社としてその精度を一定水準以上に底上げすることにします。「ここまでは必ず」というルールを明確にし、さらに「人間力」を向上してもらおうと思います。

また、高い知識を身に付ける上で、勤勉さが大切です。日々の業務に追われる生活ではなく、常に自分磨きをするゆとりを持ち続けられる、そんな環境を整備しようと思います。当たり前の事ですが。。。

ということで、「規模」や「売上」の目標に向かって突き進むのではなく、「人間力」の向上が、結果として「規模」や「売上」につながると考えます。また、会社ではなく「人間力」が前に出て、「個」が輝く業界にする。これを目指します。

 

「3.3倍」

何が3.3倍かというと、一人のお客様にかける時間が3.3倍です。
またまた大手との比較になってしまいますが、現状はざっくりこんなイメージだと思います。

大手:10人のお客様に3時間ずつ時間をかけて合わせて30時間。そこから3人のお客様と契約する。
弊社:3人のお客様に10時間ずつ時間をかけて合わせて30時間。そこから3人のお客様と契約する。

大手の場合、問い合わせ数が多いので、出会う多くのお客様から今月契約をしてくれるお客様を見極めるという仕事になります。これは現在の仕組み上、変えることは容易ではありません。
ところが弊社の場合、問い合わせ数は多くありませんし、じっくりと時間をかけて自分達の最適解をみつけたい、弊社スタッフをパートナーとして物件探し(売却)をしたいと考えているお客様がほとんどです。そのため、時間がかかってもほとんどが契約になり、上記の計算が成り立ちます。

最近、物件を購入していただいたお客様をみると、平均して25件くらいは内覧をしていただいております。
1回目の内覧は物件の見方を伝授します。それ以降は、新しい物件から時間が経っている物件まで、様々な物件を内覧していただきます。すると、段々と自分達の理想がみえてきます。

物件の購入が決まった方からこんな言葉をいただきます。
「家が決まったことは嬉しいけど、この内覧がもうできないのかと思うと、ちょっと寂しい気もします。」
そのくらい、弊社スタッフとの内覧は楽しいようです。嬉しいです!

「3.3倍時間をかける。」ただ時間をかければ良いというわけではありませんが、ほとんどのお客様は弊社型のスタイルが合っていると思います。これは弊社の最大の強みだと思います。会社として個人にノルマを与えておらず、また、じっくりと時間をかけるプロセスを評価しているので、スタッフもやりやすいのだと思います。
この強みをもっともっとアピールしていこうと思います。

もう一度書きます。
「結論は人間力と3.3倍」
お客様に最高の満足を感じていただくために、弊社が目指す方向性を明確に示す言葉です。
 

この文章は自分の備忘記録と共に、親愛なる弊社スタッフへのメッセージです。
力が沸いてきます。
未来が楽しみで仕方ありません。
頑張ります!

平成24年12月 山田 篤