はじめに

不動産業界に身を置いてもうすぐ20年になろうとしていますが、毎日毎日、寝ても起きても中古住宅売買のことばかりを考えています。ここに来て、国を中心に様々な動きがスタートしていますが、中古住宅流通市場の整備まで、まだまだ時間がかかりそうです。そのため、いずれ来る変革の時までの間、つまりたった今、有効な手段を整理して公開しておきたいと思い筆を執ることにしました。マイホームを売却する全ての人の「しあわせ」の為に。(長文です。時間がある時にしっかりと読んでいただけますと幸いです。)

 

第一章 現状の問題点

様々な問題がありますが、ここでは特に大きな問題を2つに絞ってお話をします。

  1. 査定の問題点
  2. 情報公開の問題点

 

1、査定の問題点

家の査定と車の査定

査定と聞いて馴染みがあるのは車の査定だと思います。では、家の査定は車の査定と同じでしょうか?
家の査定には2種類あります。
Ⅰ、情報公開をしてエンドユーザーに向けて販売活動をし、3か月位で売れるであろう価格を付けること。
Ⅱ、不動産会社が再販をすることを目的に買取りをする価格をつけること。Ⅰの査定の70%~80%の価格になる。
 
Ⅰがいわゆる査定で、不動産会社の担当者が査定という言葉を使うとこの意味になります。
Ⅱは買取りの査定で、こちらが車の査定と同じです。
 
まずは、ここをきちんと理解することが大切です。どういう事かと言うと、家の査定はⅠが基本であり、買取り査定ではないから、無責任な数字を出すことができるということです。例えば数社に査定を依頼した場合、とにかく売却の依頼が欲しいから、まずは高い査定額を出し、お任せいただいた後にあれこれ言い訳をして価格を安くしてもらうというケースを目にします。
 
売り手にすると、高い査定額を出してくれた会社が最もやる気があると感じるかもしれませんが、それは間違いである可能性があります。売り手自身が、査定額の信憑性を調査することができるように、公的な情報公開があれば判断できるでしょうが、そうなるまでにはまだ時間がかかりそうです。まずは、不誠実なこういうやり方があることを知っておいてください。


②戸建の査定

戸建の査定方法は、土地は取引事例比較法、建物は原価法によります。
取引事例比較法とは、実際に売れた近隣の取引事例と比較をし、当該物件の価格を導く方法です。事例が複数あればより確かな数字に近づきます。原価法とは、同様の不動産を再び購入する場合に必要な金額を再調達価額といい、そこから価値の低下する要因に応じて減価修正を行って価格を導く方法です。問題は建物の原価法です。まず何年で減価すればよいか明確な基準がないため、木造は22年、軽量鉄骨造は27年など、税法上の耐用年数を使うことが多いです。しかし、本来は何年経っているからいくらではなく、これから何年持つからいくらと考えるのが筋です。つまり、実際の耐用年数を導く方法を確立する必要があります。

さらに、現在の原価法では、リフォームした分を適正に評価する方法がありません。例えば、キッチンとお風呂を新品に交換していたとしても、それを具体的にどう価格に反映すればよいか、明確なルールがないのです。これもルールづくりが急務です。
このように、戸建の建物の査定はかなりアバウトなものと知っておいてください。
 

③マンションの査定

マンションの査定は、取引事例比較法によります。戸建の査定の土地と同じです。
駅からの距離、広さや築年数だけで価格を決めるのであれば現在の仕組みで問題ありませんが、実際には室内の状態によって価格は変わるものです。しかし、我々不動産会社が入手できる比較対象の取引事例には、室内の状態が出ていません。つまり、どういうリフォームがされているかわからないものと比較をしなければいけないのです。これでは正確な数字は出せません。築浅であれば大きな問題はありませんが、築年数が経っている物件ほど、査定額と使用価値に乖離が生まれることを知っておいてください。
  

④査定の問題点を整理

・売り手が査定額の信憑性を調査する手段がないこと
・担当者のモラル
・査定額と建物使用価値に乖離があること
・建物の実際の耐用年数がわからないこと
・リフォームを査定に反映する方法が明確でないこと
・業者間の取引事例に室内の状態が明記されていないこと
 
 

2、情報公開の問題点

情報公開は大きく2つに分けることができます。それぞれの問題点をお話します。
 

①横への情報公開

ここでは「横」を不動産業者間とします。不動産業者間は「レインズ」というネットワークで結ばれており、売り手から専任で売却依頼をいただいた場合、ここに登録することが義務付けられています。この話はかなり拡散されているのでご存じの方も多いと思いますが、物件の「囲い込み」という問題があります。簡単に言うと、レインズには登録するが、他の業者がお客様にその物件を紹介することを拒むという行為のことです。
 
この行為の問題は、売り手の機会損出です。具体的に言うと、一組しか内覧に来る人がおらず、その人から100万円値引きのお願いがあったので渋々了承して契約をしたとします。しかし、実際には内覧したいという他社からの依頼があったにもかかわらず、売り手の担当不動産会社がそれを断り、もし内覧が複数件になっていれば買い手同士が競うことになり、さらに好条件で買ってもらえたかもしれないという売り手のチャンスを拒むことです。なぜこういうことをするかと言うと、担当の不動産会社は自社で買い手をみつけると、売り手と買い手の両方から仲介手数料をもらえるからです。
 
この問題は随分前から言われていましたが、今月1日からレインズの禁止事項に明記され、ようやく明文化されました。しかし、実際の現場ではこれは続くものと思われます。「囲い込み」をせず、「横」に広く情報公開することが大切です。このことも知っておいてください。
 

②縦への情報公開

ここでは「縦」を買い手とします。買い手に対する情報公開についてです。
こういう事を書いてあるのを今まで見たことがありませんが、言ってはいけないタブーなのでしょうか?恐らく現場の最前線で働く者にしかわからない話だからでしょう。正直に書いてみます。
 
不動産会社の担当者は、売却するその物件に関する情報を「知り過ぎたくない」と考えています。これは、知った以上、買い手に伝えなければならず、万が一知っていたことを伝えずに売買をしてしまうと、それが問題で争いになった場合には負けてしまうからです。
 
例えばその物件の近隣に「おかしな人」が住んでいるとします。その情報を売り手から聞いてしまうと、買い手に伝えざるを得ず、契約まで時間がかかったり、売れなくなる可能性が出てきます。仲介の仕事は成功報酬です。契約が成立しないとすべてが徒労に終わります。知らないまま契約・引渡しが完了し、その後問題になっても、宅建業法にそこまでの義務はなく、知らなかったで済む可能性が高いわけです。
 
そのため、必要以上のことは知りたくない、つまり、宅建業法で定める必要最小限のことを売り手から聞き取り、それを買い手に伝えて、さらっと静かに、そして早く契約を成立するのがベストと考えているわけです。
 
しかし一方で買い手の立場で考えると、情報が少ないから高いお金を出せないということになっています。つまり、買った後にどこにどの位のお金がかかるか等、費用やリスクが明確ではないので、中古は高く買えないという考え方です。
 
これは、積極的な情報公開にご協力いただける売り手であっても、上述の通り仲介担当者がそれを求めておらず、それが買い手にとってメリットとなり価格に反映される可能性がある情報であったとしても、必要以上のことは聞かないというスタンスが身に付いているので仲介担当者の耳に入らないのです。こういう事情も知っておいてください。
 

③情報公開の問題点整理

・無くならない囲い込み
・保身と利益を優先する不動産会社・担当者の意識
・知りすぎたくない担当者を守る新たなルール作り
・現在の宅建業法に定めるレベルの情報量では買い手は満足しない
 
 

第二章 未来の中古住宅売買


中古住宅流通市場の整備に当たり、その模範となるのがイギリス、アメリカの仕組みでしょう。欧米では取引の大半が中古であり、日本とは逆です。そのため中古売買の仕組みが整っており、日本の中古住宅流通改革は、それを模範にしながら日本の慣習に近づけるという感じになるでしょう。概ねこの10年くらいでの変化になると思われます。未来の仕組みの基本は以下のようになるでしょう。


1.査定について

期待耐用年数という考え方のもと、同じ築年数でもメンテナンスが行き届いているものと、そうでないものでは、これから住めるであろう年数が違うという考え方になり、査定額にはっきりと差が出るようになります。また、スケルトン(構造体)とインフィル(内装設備)を分けて考え、リフォームがされているものはその分、価格に反映されることになります。また、価格について取引事例が一般公開されて、自分の家の適正価格の目安がわかるようになります。

 

2.情報公開について

売り手:一定の情報公開の義務化
近年、使われることが普通になってきた「物件状況等報告書・設備表」は任意ですが、これをワンランク上の内容にして、契約時ではなく、買い手の購入検討の段階で公開することが義務付けられるでしょう。
 
買い手:買い手責任主義となり、ホームインスペクションが常識になる
現在は売り手が瑕疵担保責任を負いますが、これが無くなる、もしくは軽減され、買い手が責任を負う(保険会社等が負う)ことになるでしょう。そのため、買い手があれこれ調査をすることになり、ホームインスペクションや瑕疵保険が当たり前になるでしょう。
 
ここまでの劇的な変化には様々な抵抗が予想されます。そのため、時間がかかります。
よって、この仕組みが整うまでの間、有効な手段を次章でまとめてみます。
 
 

第三章 変革の時まで有効な手段

ここからの内容は実際に弊社が行っていることですが、タイトルの通り、これからマイホームを売却する全ての人のしあわせの為に、公開することにします。

  1. 査定について有効な手段
  2. 情報公開について有効な手段

1、査定について有効な手段

戸建の場合

まずは売り手にできるだけ多く、物件の資料、主に建物について集めていただきます。例えば図面やカタログ類だけでなく、見積りや工事中の写真等、とにかくたくさんです。
リフォームをしている場合、いつ、誰が、どんな工事をしたのかを時系列ではっきりさせます。少しでも価格に説得力が出るように資料を揃えます。
 
次に、建物の耐用年数をどう計算するかです。例えばハウスメーカーの鉄骨造など50年は持ちます。それを27年で計算するのでは売り手も納得がいきません。そこで、スケルトンとインフィルに分けて、それぞれ50年、15年と考えますが、ここが難しいところです。どういうことかと言うと、市場全体はこういう考え方をしていないので、弊社だけこういう査定をしたところで、頭ひとつ飛び出た価格になってしまったら誰も相手にしてくれないのです。そのため、入念な市場調査の元、内覧に来てくれるであろうギリギリの高値を追求します。もちろん失敗することもありますが、安くして失敗するよりは、高くして失敗する方が挽回がききますので、このようにします。
 
土地については相場がある程度はっきりしています。そのため、とにかく建物をどう評価するかがポイントです。そして、建物の実際の使用価値を、どうやって買い手に理解してもらうか、ここに最大のパワーを注ぎます。
ただし、車検を通していない車を買わないように、手入れが全くされていない建物の評価は厳しくならざるを得ません。今からでも遅くないので、売却予定のある方もない方も、適正な時期にきちんとメンテナンスをすることをお勧めします。


マンションの場合

第一章「現状の問題点 ③マンションの査定」に記した通り、リフォーム済みで築年数が経っているものほど、査定額と実際の使用価値に差が出ます。よって、リフォームを積極的に評価するようにしています。具体的には、リフォームのかかった費用から現在価値を導くようにします。しかし、頭ひとつ飛び出た価格では誰も内覧に来てくれませんので、戸建の場合と同様に、内覧に来てくれるであろうギリギリの高値を追求します。
 
また、マンションの構造は戸建ほどバリエーションがないため、わかりやすいものです。
床、壁、天井の造りとその特徴、使っている配管の種類や電気容量についてなど、他の不動産会社担当者が見ないような事も積極的にチェックをし、メリットとなる部分を評価します。さらに管理の良さがわかる資料、例えば共用部メンテナンスの履歴や実際の状態もチェックをし、評価をします。ただし、これらは必ず価格に反映されるものではなく、物件のPRになるだけかもしれません。現在の市場では、あくまで相場観が上に来るということです。
 

2、情報公開について有効な手段

横に広く情報公開する

「囲い込み」についてはもういい加減、止めにしましょう。有効な対策として個人的な意見を述べると、内覧の依頼をレインズで行う仕組みにし、そのレインズを売り手が閲覧できるようにすれば良いと思っています。こうすれば、実際どの程度の反響があるのか売り手が確認できますし、現在の商慣習にもほとんど影響がありませんので。

さて、情報を横に広げる有効な手段の基本スタンスは、買い手に物件の説明をするのと同じように他の業者に接することです。よくわからない物件をお客様に紹介できませんので、他の業者が営業活動しやすいように気持ち良く情報を提供することです。
 
次に、レインズに登録し情報を共有すると、他社から広告の依頼があります。例えば、大手不動産会社のホームページを見るとたくさん物件がアップされていますが、その物件すべてが、その大手不動産会社が売り手から売却依頼を受けているものではなく、その多くは他の不動産会社が売却の依頼を受けたものを、その大手不動産会社が広告に借りているものです。その中には、図面や写真などが中途半端にアップされているものを目にすることがあると思いますが、これは買い手に悪い印象を与えてしまいます。上記のように気持ち良く情報提供をするという基本スタンスがあればこういう事にはなりません。
 
また、大手不動産会社は、基本的に他社がホームページに物件をアップすることを禁止にしています。自分達は他社からたくさん借りてきているのに、自分達の物件を他社に貸すことはしないのです。これは、売り手の中には依頼していない会社のホームページに自分の住まいが出ることを嫌がる人がいるからです。しかし、情報を広げるという意味では、少しでも間口を広くした方が良いわけです。そう考え、弊社では他社がホームページに物件をアップすることをウェルカムと考えています。
 

②縦に深く情報公開する

ここが弊社の一番の強みになるでしょうし、最も大切なポイントだと考えています。
売却活動に入る前に、まず売り手にご理解をいただきホームインスペクションを入れます。何をご理解いただくかと言うと、ホームインスペクションの結果、建物の欠陥がみつかるかもしれないということです。しかし、ホームインスペクションをせずに売却をしても、買い手のほとんどは購入後に何らかのリフォームをするので、その際にあれこれ調べることになり、欠陥があればみつかる可能性が極めて高いのです。そうであれば、後から欠陥がみつかって気持ち良くないことになるより、事前にわかったほうが手の打ちようがあるということです。このお話をすると、ほとんどの売り手は納得をしてくださいます。
 
次に買い手に対して深く情報公開をする基本スタンスは下記の通りです。
 
買い手の期待を上回る情報公開をする
その情報が安心感につながる
安心が価値になる
価値が価格に反映される
 
まず、ホームインスペクション済みの売却物件は現在、世の中にほとんどありませんので、他者との差別化になります。また、その他にも様々な情報を公開するので、その情報が深くささる買い手が出てきます。そうすると、上記のようになります。
 
こういう考え方は今までこの業界にはなかったと思います。これこそ、中古住宅流通市場が整備されるまでの間、有効な手段であると感じていますし、また現実に、弊社では良い結果が出ています。
 

まとめ

前述の通り、この仕事は成功報酬です。しかし、売却の相談を受けたものから成約になる率は、大手不動産会社ほど低く、3件に1件くらいでしょうか。そう考えると、1件1件時間をかけて丁寧にやっていくには無理がありますし、流れ作業的になってしまうことは仕方がないのかもしれません。
しかし、弊社の成約率は80%前後と高く、そのため1件1件上記のようにやっていくことが可能です。正確には、成約率が高いから上記のようにやっているのではなく、上記のようにやっているから成約率が高いのです。
 
これからマイホームを売却される皆様、参考になりましたでしょうか?ご感想などお聞かせいただけますと幸いです。最後までお読みいただき有難うございました。
 
平成25年10月 代表取締役 山田 篤
 
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